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●学年クラスの近況【昭和36年度卒業】
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2022年12月19日 掲載
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「八丈に帰省して」(昭和36年度卒業 太田 明代)
八丈に帰省して早いもので、この一月で四年となる。
主人が定年となり、定年後の生活について話し合った結果、主人は自給自足の生活がしてみたいと、八丈での農業生活を選んだ。
もし主人が四季を通して八丈生活に耐えられ、農業を続けられる自信ができたら、八丈に帰っても良いヨと私は軽い気持ちで言った。農作業などしたこともない人なので、一年と持たないだろうと高をくくっていたら、以外にもしぶとかった。
私は東京でやるべきことが山積しており、「いつ帰るんだァー」という主人を尻目に、二年も島流しをしてしまった。しかし、この間主人は必要に迫られ家事をこなせるようになってしっかり成長していた。そして益々八丈愛を募らせ、主人に手を差しのべてくれる人たちが皆、「我よかれ、人よかれ」ではなく「人よかれ、我よかれ」という素晴らしい生き方をしている人達で、そういう人達と生きていきたい、「八丈こそ人間が住む島だ」と八丈を終の住処と決めた。
妻の故郷に惚れ込み、こんなにも八丈を讃えてくれる主人と出会え、私は幸せ者だとつくづく思う。若い時は窮屈で刺激のない毎日が耐えられず一日も早く島を出て、早く東京へ行きたいと願っていたが、年を重ねると見えてくるものがある。朝になると、障子の木漏れ日がゆらゆらとゆらめき、鳥のさえずりで目が覚める。
東京の新青梅街道沿いに住み、排気ガスと車の騒音の中で生活していた私にとって、まさに天国のようだ。特に木の芽の新緑の輝き、澄み切った夜空の星々の煌めきが息をのむように美しく、まるで宇宙の中に包まれている「我」を感じる。そして時間に追われない、自然まかせの晴耕雨読の生活は生きているという実感がある。自然だけではない。八丈で出会う人はなぜか、飾らない自然体の心豊かな人たちばかりだ。こんな素晴らしい人たちに縁し、育ったんだと、感動さえ覚える。
ヤスデ、蚊、アリ、シロアリの猛襲など、頭を悩ませる事も多いが、自然と「共生」しているという、これらもすべてひっくるめて、これが八丈なんだと思う。
これからも多くの人たちと出会い、絆を結んでいく中で、何色になるかわからないが、色褪せぬ黄八丈のように、これからも心豊かな日々を織りなしていきたい。 聞くところによると、将来八丈は、消滅する島として名が挙がっているらしいが、このかけがえのない故郷を、私の故郷を、絶対に消滅させてなるものかと心に誓う日々である。
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